死亡事故の損害賠償請求|だれが・いつ・相場は?気になる疑問5選

2020/02/07

死亡事故の損害賠償請求とは?

死亡事故の損害賠償の相場は?

弁護士に依頼するとどう変わる?

このページをご覧のあなたは、このようなことでお悩みではありませんか?

大事な人を失ってしまった悲しみは、はかり知れないものです。せめて亡くなられた方のためにも、きちんと損害賠償を受けとりたい…。このように思いませんか?しかし、相手方からの提案額は決して適正な金額とは言い切れません。この記事では、死亡事故の損害賠償にまつわる基礎知識や相場をまとめて解説します。

死亡事故の損害賠償請求|5つの基礎知識

①損害賠償の内訳

交通事故で被害者が死亡した場合、次のような損害賠償が発生します。

死亡慰謝料
死亡逸失利益
近親者固有の慰謝料
葬儀費用

もし、事故現場から病院に搬送されて手術などをおこない、それでも命を落としてしまった場合には、もちろん治療費や手術費用も請求可能です。

また、何らかの後遺障害が残ってしまい、その後に交通事故が原因で亡くなられるケースももあるでしょう。 その場合、入院・通院に関する慰謝料は受けとれますが、後遺障害に対する損害賠償と死亡に対する損害賠償は重複して受けとれませんので、気を付けましょう。

②誰への損害賠償か

死亡慰謝料は、交通事故で命を落とした被害者本人への慰謝料です。交通事故における「慰謝料」とは、精神的苦痛に対して支払われる金銭です。死亡慰謝料は、事故で「死」という精神的苦痛を感じたことへの損害賠償になります。

③誰が請求するのか

亡くなられた被害者の財産などを相続する人に、「損害賠償請求権」も相続されます。 相続順は次の通りです。


▼相続順
配偶者 ・ 子 > 直系尊属 > 兄弟姉妹

配偶者と子がいれば、それぞれ1:1の割合で相続します。
「子」がいなければ直系尊属、直系尊属がいなければ兄弟や姉妹が相続するのです。


 

相続するということは、相続税がかかってしまいますか?

不法行為(交通事故)による損害賠償の性質をもつものは、税金の対象外です。相続税はかかりません。

④いつ請求するのか

お葬式を終えて四十九日を過ぎてから、少しずつ気持ちを落ち着けて始めれば十分です。

損害額が確定するという点では、お葬式が終わりしだい請求可能です。しかし精神的につらい状況かと思いますので、すぐに始めなくていいのです。

もっとも、損害賠償請求には時効もあります。
✓2020年3月31日までに起こった死亡事故:損害及び加害者を知った時から3年
✓2020年4月1日以降に起こった死亡事故:損害及び加害者を知った時から5年

2020年4月1日の民法改正に伴い、時効は事故発生日時により変わります。
時効を過ぎると損害賠償請求ができなくなりますので、注意しておいてください。

⑤相手方からの提案額は適切なのか

相手方の提案をそのまま受け入れるのではなく、弁護士による増額交渉をおすすめします。なぜなら、金額を算定する基準は3つあり、相手方は、最も金額が高くなる基準(③弁護士基準)では計算してくれないからです。

慰謝料を算定する基準は、次の3つです。

自賠責保険の基準
任意保険の基準
弁護士基準

①自賠責保険の基準は、被害者を救済するための最低限の水準になります。自動車の運転手には加入が義務付けられているので、自動車との死亡事故被害者であれば、少なくとも自賠責保険の基準での損害賠償を請求することは可能です。

②任意保険の基準は、いわゆる保険会社の社内ルールです。算定金額は自賠責基準と同じか、少し高くなる程度です。自動車の運転手によっては加入していない場合もあり、任意保険未加入ですと損害賠償がきちんと支払われない可能性が高まります。

保険会社は①②どちらかの基準で算定した損害賠償を提案してきます。


③弁護士基準は、弁護士が示談交渉するときに用いる基準です。裁判所でも使われており、過去の判例などをもとにしています。受けとる金額は最も高くなります。

 

では、「弁護士基準での算定をしてください」と言えば保険会社は増額してくれますか?

残念なことに、個人での増額交渉は難しいかと思います。弁護士が交渉の場に出ることで、弁護士基準の算定が可能となるでしょう。

死亡事故の損害賠償|いくらもらえる?

先ほどご説明の通り、損害賠償を算定する方法(基準)は3つあります。そのうち、任意保険基準は各保険会社で異なり、非公開とされています。ですので、弁護士基準と自賠責保険の基準のちがいに注目してみましょう

死亡慰謝料・近親者固有の慰謝料

まずは、死亡慰謝料の相場です。

死亡慰謝料:被害者の立場と死亡慰謝料/慰謝料の単位は万円

立場弁護士基準自賠責基準
一家の支柱2800350
母親・配偶者2500350
独身・子ども2250350

弁護士基準の金額は、死亡慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計額です。

 

自賠責保険の基準の350万円には、別途以下の近親者固有の慰謝料が加算されます。
▼近親者固有の慰謝料(自賠責基準)/慰謝料の単位は万円

近親者人数うち扶養者なしうち扶養者あり(+200万円)
1名550750
2名650850
3名以上750950

自賠責保険の基準に基づいた場合、死亡慰謝料と近親者固有の慰謝料の合計は最大で1300万円です。それは、本人分(350万円)+近親者3名以上(750万円)+近親者に被扶養者あり(200万円)=1300万円の内訳になるからです。

弁護士基準の相場は、被害者が独身・子どものときに最も低くなる傾向にありますが、それでも2250万円です。 およそ950万円もの大差が出るので、やはり弁護士基準での交渉が望ましいでしょう。

死亡逸失利益

死亡逸失利益は次の計算式で求めます。被害者の事故前収入や年齢で変わりますので、相場は出せないのです。


計算式
基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数


基礎収入と言うのは、事故にあう前の給与です。

生活費控除率は、亡くなられたことで服飾費などの生活費が掛からなくなった分を引くためです。被害者の立場、性別、扶養者の有無で生活費控除率は基準が設けられています。

▼死亡慰謝料の生活費控除率/支柱とは世帯の生計を支える立場のこと

立場・性別・扶養人数生活費控除率
支柱・男女問わず・1人40%
支柱・男女問わず・2人以上30%
支柱以外・女性・0人30%
支柱以外・男性・0人50%
上記以外40%

労働能力喪失期間(就労可能年数)は、死亡時の年齢から67歳までの差をさします。なぜなら、67歳が就労可能年齢の上限と考えられているからです。
死亡逸失利益とは、亡くなられたことで、67歳まで本来得られるはずだった収入が失われたと考えるものです。
もし67歳以上の方が亡くなられた場合、その年齢での平均寿命から逆算して算定します。「高齢者だから逸失利益は出ない」とは思わなくていいのです。計算はやや煩雑になりますので、弁護士に問い合わせてみましょう。

以下は就労可能年数にあたるライプニッツ係数を抜粋しています。

▼就労可能年数とライプニッツ係数

就労可能年数2020年4月以降2020年3月まで
10.970.95
54.584.33
108.537.72
2014.8812.46
3019.6015.37

葬儀費用

葬儀費用は、次のように基準額が定められています。

▼葬儀費用の相場/慰謝料の単位は万円

弁護士基準自賠責基準
15060(最大100)

葬儀費用には、お葬式・法要にかかる費用の他にも、墓石を購入するなどの埋葬にかかわる費用も含みます。


このように、死亡慰謝料の相場、近親者固有の慰謝料の相場、葬儀費用の相場はすべて弁護士基準で算定することで増額が期待できます。

死亡事故の損害賠償は弁護士に示談交渉を任せるべき

弁護士基準での死亡慰謝料獲得には、弁護士の存在が必要不可欠です。なぜなら弁護士がいることで、きちんと増額しないと裁判になるかもしれないと相手に思わせることができるためです。

相手方の保険会社は、次のような理由から裁判を避けたいと考えています。
✓日々多くの事故の対応をしているから長引かせたくない。
✓遅延損害金や被害者の弁護士費用の一部を被害者に支払う判決が下されるかもしれない。

示談交渉の段階から弁護士が前面に出ることで、「裁判も辞さない」という姿勢をみせることができます。

アトム法律事務所京都支部は、全国に支部展開するアトム法律事務所弁護士法人のネットワークが強みです。 たとえば、仲間の中には保険会社側の弁護士として活動した経験のある弁護士も在籍しています。相手方の事情が手に取るようにわかるので、適切な対応ができます。このように弁護士同士でノウハウを共有し、多くの事故解決に携わってきました。

大切な人を亡くされたつらい体験をお話しいただくことになるかと思います。落ち着かれてからで結構です。今のお気持ち、お悩み、困っていることをじっくり聞かせていただけませんか。

交通事故の関連記事